冬になると食べたくなる粕汁。鮭やブリ、大根、にんじん、ごぼうなどを入れて酒粕で煮込んで作る粕汁は、体の芯からぽかぽかあったまって、寒い日にうれしいごちそうじゃ。若い人の中には、粕汁や、酒粕を使った料理を作ったことがないという人がいて、お店の人が、「酒粕を買うのは50代以上の人がほとんど。家で作る人も少なくなったかもしれませんね」と話していたよ。もったいない。
酒粕は、日本酒を作る時に発酵したもろみを搾った後に残るもの。カスと呼ばれているけれど、栄養満点でいろいろな効用があるんじゃよ。お肉や魚を酒粕に漬けておくと、酵素の働きで柔らかくふっくらと美味しく仕上がる。雑菌の増殖を抑える働きがあるから、味噌作りの時のふたにするのもいい。大根やカブと和えれば即席の粕漬けに。酒粕で作る甘酒は、風邪薬としても重宝されてきたんじゃよ。飲む点滴と言われるほど滋養が高く、江戸時代には厳しい暑さをしのぐ栄養ドリンクとして、夏にもよく飲まれていたそうな。酒粕は、もっともっと広く親しまれてもらいたいものじゃ。
酒粕作りは、神様にお供えした蒸し米にカビが生えたので、それでお酒を作ったのが始まりと言われている。お供えのお米を捨てるのはもったいない、何かに使えないかと思った人の発想が、お酒だけでなく酒粕を生み、粕漬けや甘酒、粕汁にまでつながっていった。
もったいないと思う気持ちは、やっぱり大事じゃね。
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