廃校する小学校の卒業文集を読ませてもらったよ。「学校の桜の木で染めたハンカチを作りました。思い出の品として。校門の前にあって、毎日前を通っていた桜の木。花の季節には、卒業生の門出を祝い、新入生をあたたかく迎えてくれた木。だけど、自分たちが卒業したら終わり。次の春を見る人はもう来ないのだと思うと、涙がこみあげてきました。
染め方の先生が、桜の木の枝や葉っぱで布を染めるときれいな桜色になると教えてくれて、やってみることにしました。秋に葉っぱ、冬には枝を拾い集めて染めて、桜染めのハンカチが2枚できました。花びらではなくて、茶色の枝や葉っぱが桜色になるなんて、不思議でおもしろかったです。そして、卒業式のために、みんなのハンカチを飾って、講堂に大きな桜の木を作りました。あたりまえにあったもの、ずっと続いていくと思っていたものがなくなってしまうなんて、とてもさみしいです。思い出をとっておく方法はいろいろあると思うけど、桜のハンカチを見るたびに、一緒に作った友だちや先生、教室、時間、桜の風景を思い出して、
私の心も桜色になります」
心に残る文章じゃった。自分だけではもったいないと思って、ここに書いたよ。
この小学校では、卒業式のあと、村の人たちが、手作りの桜ごはんと桜餅で桜の宴をひらいてくれて、お別れをしたそうじゃ。桜の花もいつもより早めに花開いて、笑顔で見送ってくれたんじゃと。
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