もったいないばあさん日記

鯉のぼり/127

外国から来た人が商店街に飾られた鯉のぼりを見て、「魚のお祭りがあるのですか」と聞いていたよ。案内の人が「いやあれは、子どもの日の飾りで……」のあと、なぜ鯉のぼりなのかの説明につまっていたので、助け船を出すことにした。

 鯉のぼりが立てられるようになったのは、江戸時代から。武士の家では男の子が生まれると、子どもを病気から守ってくれる神様ののぼり旗を立ててお祝いしていた。それを見た町の人が、急流の滝を鯉だけが登りきり龍になったという中国の伝説の話を聞いて、鯉の絵を描いたのが始まりと言われている。龍になった鯉のように、強くたくましく育ってほしいという願いをこめてね。一緒に飾られる五色の吹流しにもカラカラ回る矢車にも、魔よけや厄よけの意味がこめられているんじゃよ、というと、外国の客人が「子どもたちへの愛情がつまっているんですね。江戸時代から続いているなんて、素晴らしい」と話していた。それを聞いていた人は「うちにも男の子がいますが、ここ数年鯉のぼりを出してなかった。もったいないですね」と苦笑い。
 
 鯉のぼりが風にたなびくのを見ていると、気持ちがいい。子どもたちと一緒にながめて、そこにこめられた思いも伝えていきたいものじゃ。その思い出はきっと、愛されて育った子ども時代の記憶として、いつまでも心の中に生き続けていくよ。

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