おひな様の家とよばれるお宅がある。立春を過ぎた大安の頃から、表から見えるようにおひな様が飾られているんじゃよ。いつもは静かな道が華やいで見える時期。おひな様が大好きな人たちが集まっている所に私もおじゃましたよ。
「うちにはおひな様がなかったので、友だちが気を使ってひな祭りに呼んでくれました。楽しかった思い出もあるけど、うらやましくて、自分のおひな様があればとずっと思っていました。その反動からか、娘が生まれて間もなく七段のひな人形を買って飾りました。うれしくてうれしくて、毎年飾るのが楽しみでした。
その娘が大きくなって嫁いで置いていったのを、私がもらって飾っているんです」と家の奥さん。
「せっかくのおひな様、飾らないなんてもったいないものね」と言うと、「そうなんです。うちのおひな様素敵でしょうって見てもらいたくて外に向けて飾ったら、うちのもぜひ一緒にという方が何人もいらしてね。こんなにきれいなのに、箱にしまったままじゃもったいないと思っていたんですって。
江戸時代のおひな様や縁起の良いつるし雛、大きいのや小さいのや、いろいろなおひな様が集まって、皆さんとひな祭りをするようになりました。この時ばかりは娘時代に戻ったみたいで楽しいです」じゃって。
子どもの成長とともに祝ってきたひな祭り。いくつになってもいいもんじゃ。子どもも大人も、すべての女の子の幸せを願って、甘酒で乾杯したよ。
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