マンションに引っ越した人が、住人同士出会っても挨拶をしないことがあって残念と話していた。前に住んでいたところは、皆顔見知りで、声かけ合って暮らしていた。面倒だと思うこともあったけど、今から思えば気軽に挨拶ができる関係は、有難いものだった。
今は不審者扱いされるかもしれないから、泣いている子がいても、気安く声をかけられないんだとため息をついていたよ。なんだか悲しいねえ。
同じ建物に住んでいるのに、不安や不信、挨拶もできない中で暮らすだなんて。
それからしばらくしてどんな様子か聞いてみると、マンション内で交換日記のようなものを始めたという。
管理組合の連絡ノートのはしっこに、新しく越してきたのでよろしくお願いしますと書いたら、読んだ人がこちらこそと返してくれて、それからまた、子どもの泣き声でご迷惑をおかけしていたらすみませんと書いてくれる人もいて、そのうちに、少しずつ顔が見えるようになった。
「おはようございます」「いってらっしゃい」と声をかけ合っていたら、初めは目をそらしていた人も返してくれるようになり、今では挨拶するのも笑顔も増えたとのこと。よかった、よかった。声をかけ合う努力をしないまま心を閉ざしていたら、もったいなかったと思うよ。
挨拶は、心と心をつなぐもの。交換日記は、心と心の交換になったね。
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